縁結神社の由来

 ある年の十月、出雲大社の神様会議でヤマト民族を増やすには全国へ縁結びの神を祀るのがよいと決められた。急いでご神体を作り、年内に全国へ配布することになった。出雲から信濃の国府松本へ送られるご神体は、三人の使者が付き添ってはるばる信濃を目指して出発した。使者が小木曽地区へ着いたのは、師走も半ばを過ぎ、雪も深く積もった日であった。急に降り出した大雪はみるみるうちに積もっていった。辺りは暗くなってきたので今日はここで野宿することにした。枯れ木の枝を集め、焚火しているうちに昼間の疲れが出て、三人はいつしか深い眠りに入っていった。

 何時間眠ったことであろう。夜中頃、三人の枕元へ白装束の翁が現れ、「この林へ祀るべし」とお告げを残して煙のように姿を消してしまった。ハッと思って三人は飛び起きた。みんな同じ夢を見ていたのだった。三人でこの不思議な出来事を話しているうちに夜が明けてきた。すっかり明るくなった頃、地元の人たちが輪カンジキで雪を踏み分けながら上ってきた。茶屋の主人は村中に相談して若者を選び、三人を助け出そうと、夜明けを待って出発したのだという。三人は、その親切を感謝し、用意して来てくれた握り飯をほおばりながら夕べ見た不思議な夢物語を話しこれからどうするか村人と相談した。

 やがて、村人たちの協力で祠が造られ、吉日を選んで三人が野宿をした洞穴の中へお祀りすることが出来た。三人の使者は地元の人たちに今後のことを頼むと、出雲へ引き返していった。

 

[縁結神社由来記]より抜粋

伝説

 

昔、飛騨の商人の家に美しい娘がいました。主人はもうそろそろ嫁にやらなければならないと思っていたのですが、娘は店の若い奉公人に恋をしてしまいました。二人は結婚しようと決めていたのです。そのころの世の中は身分の大変厳しい時代でしたので、主人がそれを知った時の驚きと怒りといったら、それはすごいものでした。それでも二人の気持ちは変わりません。そこでとうとう飛騨から逃げようと決心し、夜中にこっそり逃げ出してしまいました。

  飛騨の町では大騒ぎ。奉公人達が二人を探しまわっています。山をいくつも越えて、木祖村にやってきた二人は縁結神社の前にすわりました。ここは昔から縁結びの神がいると言われ、まわりの木の枝の一つを、男の人の親指と女の人の小指だけを使って結ぶと、その二人は結ばれると言い伝えられていました。そこで二人はそばにあった桜の木の枝を結び始めました。夜になりましたが木の枝は結ばれません。けれど東の空が白々と明け始めた頃、やっと努力のかいあって桜の枝がしっかりと輪をつくったのです。ちょうどそこへやってきた公人達はその光景を見て諦めました。

 

「私たちが調べた木曽の伝説第一集」

  木曽西高地歴部民俗班編集 より抜粋